看護師として働いてきた7年半の間、少なからず思ってきたことがあります。
それは、「看護師って感情的な人、多いよなぁ」と言うこと。
新人だった頃は、患者さんの前だろうが何だろうが怒鳴られたし、ボールペンやペンライトは床に投げつけられてどこかに飛んでいくし、『叱る』という名目で人格否定されたこともありました。
ただ、転職後も同僚に対してかなり感情的になる看護師さんはいました。
でも、日常生活でそこまで感情的になるような職業に出会ったことってありますか?
ラーメン屋の店主がアルバイトに怒鳴ってたみたいな話は友人に聞いたことがあるけれど、私自身は経験がありません。
そこで今日は、『看護師が感情的になる理由』について考えてみました。
看護師はなぜ感情的になりやすいのか?
そもそも、マイナスな感情がむき出しにならざるを得ない時って、どんな時ですかね?
・ストレスをため込みすぎた
・予定通りに動けず、仕事が思い通りに進まない
・余裕がない
パッと思いつくのはこんな感じです。
……看護師、すべてに当てはまりません?
命の責任を負うストレスがあり、ナースコール対応などで手持ちの仕事は思い通りに進まなず、仕事量が多すぎて削りに削られる余裕……。
本当に元も子もないことを言うけれど、『看護師』という職業自体がハードすぎて、そこに余裕を持てということ自体が無理難題じゃない?
加えて、看護師は同時に冷静であることも求められる職種です。
例えば患者さんの急変対応時に、頭がパニックのまま正確な薬剤の準備や投与ができますか?
看護師をやっていると、何もかもを差し置いて頭をクールダウンさせなければいけない瞬間が来ます。
沸騰しそうな感情を、いったんクールダウンさせなきゃいけないような瞬間が来ます。
その時は良いかもしれませんが、その沸騰した感情、後からどうすれば良いでしょう?
そんな看護師の働き方自体が、そもそも感情的になりやすく、しかもそれを爆発させやすい要因を含んでいるのではないでしょうか。
看護師が新人にイライラしてしまう理由
前提として、看護師の仕事はマルチでハード。
マンパワーが足りない職場では、誰もが毎日『ヒトの命』と言う重い責任を負いつつ、自分の仕事を終わらせるのだけで手一杯です。
加えて新人教育やプリセプター業務が入ってくると、
(死ぬほど忙しいのに、新人の面倒も見なきゃいけないのかよ……!)
という感情が産まれるのは、多少仕方のないことだとは思います。
多少ね、多少。
最初はみんな仕事できないところからのスタートですから、忙しいからと言ってパワハラ・モラハラしていいわけではありません。
しかし、右も左もわからない新人看護師が、『ストレス発散』という名のサンドバッグにされるのにはそんな理由があると思います。
看護師は言葉に感情をのせるからツラくなる
例えば、上記のように『ストレス発散』の意味を持って、新人看護師と先輩看護師が関わるとどうなるでしょうか。
よくある例:
新人看護師の仕事が思ったより遅かった場合
「遅い!」「今まで何してたの!」
新人看護師が勉強不足だった場合
「できないんだからもっと勉強しないとダメでしょ!」
新人看護師がインシデントを起こした場合
「なんで確認しなかったの!」
……この「!」という威圧、いりますか?
なぜ新人看護師がそうしたのか、そうなった理由は何か、今後どうしていこうと思うのか。
問題点は何で、これからどうしていけば良いのか。
それを聞く時に、威圧はいりません。むしろ逆効果です。
新人の仕事が遅いと感じたなら、今まで何をしていたのか訊くだけで良い。
勉強不足だと感じたなら、今のあなたには何が足りないと思っていて、今後はどういうを勉強をしてきたら良いと思うのか伝えれば良い。
インシデントを起こした時もそうです。
インシデントは誰しも起こし得ることですし、もともとインシデントレポートを書く意味って個人を糾弾することではないですよね。
それなのに、感情をそこにのせて暴言を吐いてしまうとどうなるでしょうか。
言われた方は傷つくし、言った方はずっとイライラしているし、その暴言を聞いた第三者のテンションも下がります。
職場環境が良くなるわけないですね。
これ、誰が得するんですか?
ぶっちゃけると、新人看護師さんの勉強不足にイライラしたことは私もありますよ。
ヒトの命を預かっているのに、なぜこんなに知らないことが多いのかと。
しかし、私も少なからずそんな新人でした。
加えて、目の前の新人さんは今それを知らないのだから、教えて学んでもらうしか、新人さんが看護師として成長する術はないのです。
知らないことは学んで覚えて、今後に生かしてもらうことしかできないんです。
「もっと勉強しなさい」と叱るのは、きっと意味のあることでしょう。
威圧的になってしまう理由は、余裕がないからです。
余裕がなくてイライラして、目に見えてできない新人さんに当たってしまう。
先輩看護師も新人だった頃は、きっとそのように育てられてきたのでしょう。
でも、それが無駄以外の何でもないことに、看護師はそろそろ気づくべきなのではないでしょうか。
暴言を吐くのは犯罪
私が最初に勤めた職場のように、新人看護師や立場の弱い人間に暴言を平気で吐く職場もありますが、そもそも暴言を吐くこと自体が犯罪になる可能性があります。
私は元看護師で法律にはまったく詳しくないので、弁護士さんが解説している下記のリンクを参考にしてください。
http://taniharamakoto.com/archives/2458/
著しく他人の迷惑になる行為は犯罪になりますよ、ということが書かれています。
でも、実際の現場はどうでしょうかね?
経験上、病院内では患者さんから医療従事者に対する暴言、さらには暴力行為もうやむやにされますし、先輩看護師は新人に威圧感のある言葉で、時には人格まで否定したりとパワハラモラハラを繰り返しています。
立場の弱い者は守られず、何も起きていないことにされる。
それがまかり通ってしまうくらい、病院は閉鎖的な空間です。
ただ、暴言が犯罪になる可能性があるのは事実。
これは覚えておいてください。
暴言を吐きそうになった方にはその抑止力になりますし、吐かれた側はこの事実を知識として持っておき、証拠を集めればいざという時に戦えます。
ただ、個人が環境を変えることは困難
この記事を読んでくれたからと言って、今のツラい状況が劇的に変わるかと言えば残念ながらそうではありません。
個人の考え方や行動が変わったところで周囲が変わらなければ、大勢の中で働く一個人としては、変化を感じられないと思います。
結局は多勢に無勢なんですよ。
加えて、朱に交われば朱くなるということわざもある通り、周囲の環境が悪ければどうしても少しは染まってしまうし、染まってしまった方が楽な場合もあります。
ですが、そんな人間になりたいですか?
今、周囲であなたに暴言を吐いているような、そんな人間に近づきたいですか?
長く働く職場です。
労働環境を変えた方が長期的に見て良い場合もあるので、一度人間関係や給料面を見直してみると良いでしょう。
最後に
チクチク嫌味を言ったり、怒鳴ったりすることには、言葉そのものの意味を薄れさせる効果があると思います。
どんなに良いことを言っていても、怒りやイジワルなどの余計な感情を入れたら、言われた相手にストレートに届かなくなってしまいます。
それってもったいなくないですか?
ストレスフルな職場だし、先輩に理不尽に厳しくされたから私も後輩に理不尽に厳しくするというサイクルは、いよいよ断ち切るべき時が来たのではないでしょうかね。
イヤになったら簡単に辞められる、そんな時代が来ましたからね。
看護師の職場環境が少しでも良くなれば良いなと思っています。