美容外科や美容皮膚科といったいわゆる美容系は、病院や病棟とは違う世界だと感じる看護師さんは多いのではないでしょうか?
中には、美容系に対して『高給与、楽そう』など、ポジティブなイメージばかり持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。
夜勤アリの病棟・施設勤務に疲れた新人看護師さんや、幼い子どもを抱えて働くママナースさんなど、夜勤がないこと自体に魅力を感じる看護師はけっこう多いのでは?
そこで今回は、
『新人看護師やママナースが美容系に勤めるのは実際どうなのか?』
について、美容系のメリット、デメリットなどと一緒にまとめました。
Contents
新人看護師・ママナースが美容系に勤めるメリット
夜勤がないのに、高給与
人の命を預かる仕事にしては、
「看護師の基本給ってぶっちゃけ低すぎるよな」
となすび―は思います。
世間一般で看護師の給与が『高い!』と言われるのは、夜勤手当があるからだと看護師の皆さんは少なからずご存知のはず。
しかし、それを覆すのが美容系です。
一般的に、美容外科の給与の相場は30万円以上です。
高給与の理由は、自由診療だからですね。
保険が効かない分、施術にかかる金額も高額になり、それが医師や看護師のおカネになるわけです。
美容皮膚科だともう少し下がるそうですが、こちらは手術が少ないというメリットもあり、美容外科と同じく自由診療なので、やはり一般的なクリニックよりは高給与になります。
加えて、看護師の営業によって施術が成約できたり、化粧品などの商品を買ってもらうことができれば、それに応じてボーナスも加算されていきます。
努力すればさらに高給与を目指せることは、幼い子どもがいて夜勤のできないママナースさんにとっても、ありがたい条件になるでしょう。
必然的に身だしなみが整う
美容クリニックに来院される患者さんは、基本的に美意識が高いです。
看護師の見た目もそのクリニックの『商品』になる以上、働いているスタッフも一定の美しさを保たなければ説得力がありません。
身だしなみに手抜きができなくなるので、必然的にキレイでいることができます。
病棟勤務をしていると、夜勤時にドすっぴんだったり、あるいは夜勤を通して忙しく化粧を落とせなかったり……。
自分の身だしなみに無頓着でいたくなければ、華やかな環境に身を置くのもひとつの手だと思います。
若さ・肌の美しさが説得力になる
新人さんなどの若い看護師さんが、美容系の看護師をやる大きなメリットがこれだと私は思います。
私は去年30歳になりましたが、30代って驚くほど肌の質がガラッと悪い方に変わります……。
もともとそこまで美容に熱心ではないのですが、さすがに自分の肌質を直視するとショックでした。
若さって良いですよ。笑
若いうちには気づかないものですが、若い肌には透明感があって美しさが違います。
若さが生かせるのは、新人さんにとってはメリットになると思います。
新人看護師・ママナースが美容系に勤めるデメリット
ノルマがプレッシャーになる
普通の病棟に、ノルマというものは存在しませんよね。
美容外科ならではの特徴になります。
看護学生の時に美容系を経験することはないですよね。
そのため、新人で美容系に行くと、実習で経験してきた看護師のイメージとはかけ離れた仕事を経験することになります。
自分の営業による施術の成約件数や、化粧品の売り上げといったものがノルマに当たりますが、ノルマ達成には技術も要ります。美容外科最大の難所になるでしょう。
しかし、その売り上げは自分の給与に反映されるので、やりがいにも直結しますし一概にデメリットとは言い切れません。
ただ、
「どうしても人と話すのが苦手だ……」
「新しいことを経験するのが苦手だ……」
という方には向かないかもしれませんね。
接客業感が否めない
上記のノルマを達成するためには、患者さん=お客様という視点が必要となります。
病棟や施設で看護師を経験してからだと、そのギャップに違和感があるかもしれません。
病棟での接遇には、例えば患者さんにタメ口を使う看護師がいたり(注:良いことではない)とユルい部分もありますが、普通のコンビニやデパートでタメ口を店員さんに使われることはないと思います。
美容系も基本的にそれと同じです。
本来の病棟より接遇に厳しいのは間違いありません。
病棟での経験が生かしにくい
生かせないと断定はできません。
手術室勤務など、経験によっては美容外科でその技術を重宝されることもあるでしょう。
しかし、新人看護師さんにはそもそもの経験がない、または少ないため、美容系そのものに生かせる経験も乏しいです。
何か月か病棟などでの勤務を経験して転職した場合でも、一般的に想像する看護師の仕事と美容系の看護師の仕事には、上記のように大きな違いがあります。
これが厄介で、例えば新人看護師さんが美容系を経験してから他の一般的な病院に転職したいとなると、確実に看護技術は不足します。
これは大きなデメリットになるでしょう。
新人看護師・ママナースが美容系に勤める時に必要な知識
美容系の仕事を考えると、求められる看護技術は以下です。
・手術補助
・注射、点滴
手術補助
美容外科では、目や鼻などの整形はもちろん、豊胸手術や脂肪吸引など、あらゆる手術を行います。
輸血したり昇圧剤を使ったりなど命に関わるような手術ではありませんが、清潔不潔の概念や医師が使う物品を準備し手渡すなどの技術は必要です。
美容皮膚科であれば脱毛やシミ・そばかすの除去などがメインになり、切る手術をしないことも多いですが、美容外科と美容皮膚科が一緒になっているクリニックが多いです。
手術の知識を学ぶのにおススメな書籍として、『ねじ子のヒミツ手技#』があります。
こちらは例えば『手術の時の糸の結び方』や『人工呼吸器の管理』なども載っている、医師も使えるガチめな1冊です。
しかし、イラストで内容がわかりやすく、清潔不潔などの基礎から学べる点で、導入からかなり深くまで手術に関する知識をカバーできる秀逸な書籍だと思います。
私は単純にねじ子先生のファンなので、この本が好きです。笑
この本について深く知りたい方は、こちらの記事に詳しく載せました↓↓
ちなみに、ねじ子シリーズの書籍については記事をいくつか書いています。
タグ付けもしてあるので、興味があれば見てみてください。
復習するにもわかりやすい、良い書籍だと思いますよ。
注射、点滴
美白やエイジングケアなどのためのいわゆる『美容注射・美容点滴』を行うために、注射と点滴の技術は必要です。
ただ、病院であれば高齢などの理由から血管が細く脆い患者さんも多いと思いますが、美容クリニックでは一般的に健康な方を対象にするので、もちろん個人差もありますが血管は太くてしなやかな方も多いでしょう。
半年でも「高齢者を相手に注射や点滴をこなしました!」という看護師さんであれば、そこまで不安に思う必要もないと思います。
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他には、コミュニケーションスキルは本当に大切です。
美容クリニックに来られる方は美意識が高かったり、自分の外見にコンプレックスがあるなどの理由から、
『コンプレックスが改善されて、美しくなれること』
を目的にして来院されます。
美容クリニックで実際に行われている施術や点滴の値段、見たことありますか?
見たことがなければ、近所の美容クリニックのホームページを見てみましょう。
高額な代金を支払ってでも、自分の『美しさ』を保ちたい、理想を叶えたいと思っている方が、美容クリニックに来ます。
患者さんが求めていることは何かを聞き出し、どんな施術をしたらコンプレックスがどのように改善されるのか、どんな効果が得られるのかなど、美容クリニックで提供できる技術を把握し紹介できることが、美容系に勤める看護師さんにとって最も必要になることだと思います。
新人看護師・ママナースが美容系に勤めるのは
ここまで、美容系のメリット・デメリットや必要技術を見てきましたが、本題です。
『新人看護・ママナースが美容系に勤めることはどうなのか?』について個人の意見を書きますね。
私は、新人看護師さんについては
新卒でいきなり美容系に勤めるべきではない
と思います。
べきではないというか、
看護師人生がハードモードになるかもしれません。
新人看護師に美容系がおススメできない理由
理由は以下の2つです。
① 看護師として身に着けられる技術が制限される
② 理想と現実のギャップが大きい
まず1つめが最も大きな理由です。
上にも書きましたが、新人さんにとって身に着けられる技術が制限されることは、大きなデメリットです。
「美容系に行くために看護師になりました!」
とか、
「美容系に骨をうずめるつもりで行きます!」
とかであれば、それはとめない。
私が心配なのは、『美容系クリニックに行ったけれど、やっぱり病院(他科)で勤めたくなった』時です。
上記で美容系に必要な技術として挙げた注射・点滴をとっても、美容クリニックに来る健康な人に注射や点滴をすることと、全身状態の悪い高齢患者さんに点滴・注射をすることは、難易度が段違いです。
まずは病院で一通りの技術を身に着けた方が、後々つぶしが効くのは間違いありません。
経験年数に比べて経験した看護技術が少ない看護師に、
「そんなこともできないの?」「〇年目なのに使えない」
とかふざけたことを言う看護師は、残念ながら存在します。
美容系から転職し、新しい職場で働くと決めた以上、経験がなくできない技術は学んでいくしかありません。
経験してきたことに違いがある以上、仕方のないことですし、美容系の経験者にしかできないことも無論あります。
しかしそれを理解していない人間もいます。
加えて、美容系で経験できる看護技術は一般的な病院と比較して少ないことは確かです。
美容系が目指していることと、一般的な病院が目指していることとの間には、埋められない溝があります。
美容系を選択する前に、看護師として自分が叶えたいことは何かをもう一度考えてみてください。
叶えたいことが特にないのであれば、最初は一般的な病院に勤めた方が無難だと私は思います。
もちろん、美容系を悪く言うつもりはありません。
美容系のオペ補助経験により、清潔不潔の概念を体にしみこませておけることは経験としてマイナスにはならないですし、高い接遇技術はどこに行っても重宝されます。
ただ、新人さんについてはお節介な心配をしてしまう……と言うのが、なすびーの正直な感想ですね。
経験アリのママナースは美容系に進んでも大丈夫
ママナースさんについては、経験を積んでいる方も多いと思うので、美容系に進んだとしても技術面で何ら問題は起きないでしょう。
ただ、上記のように接客、営業の技術が必要になるので、世界がガラッと変わることは覚悟しておいた方が良いです。
どちらにしろ、『看護師として働く時に何に重きを置くか?』を考えることが、美容系を選択するカギになると思います。
自分が重要視することが美容系に勤めることで叶えられるのかを、じっくり考えてみてください。
最後に
仕事である以上、完全に楽な仕事なんてありません。
「美容系は私たちみたいに人の命を預からないから楽でしょ」
と言う看護師を実際に見たことがありますが、そんなわけないでしょ。
どこかの部署の仕事を楽だと決めつけるのはマウンティングの引き金になりますし、見えていないだけでその場所にしかない苦労というモノは確実にあります。
隣の芝生は青く見えるものなんですよ。
ただ、美容系には、人によってその苦労を上回るメリットもありますし、看護師なら誰しもが経験する命の瀬戸際という緊迫した場面を経験せずに働けることは、とても大きな特徴であると言えます。
興味があれば一度経験してみると、肌に合うかもしれませんよ。
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